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地図の概念地図の概念
2017.09.27
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地図の概念
※本記事は、取締役COOの川島がハーバード大学デザイン大学院(GSD)留学時代のブログに一部編集を加え、転載しています。
9月から建築・都市デザインコースの授業がスタートした。その準備であるプレタームでは、都市デザインの基本的な技術であるGISを使った地図作りのワークショップがあった。GISとは、都市の地図のCADデータを編集するソフトだ。その一本一本の線に地球上の座標や、道路の名前、ビルのオーナー名などの情報が紐付けられていて、どの地域が富裕層が多いか、どこが公共交通機関へのアクセシビリティが良いかなどの情報を、地図上に可視化することができる。そのデータをRhinocerosにエクスポートすれば、Grasshopper等を使ったアグレッシブなビジュアル化が可能だ。
GSDの建築・都市デザインコースは基本的に建築教育を受けていないと入れない学科だ。逆に言えば、殆どの学生が都市デザインの経験がない。そのため、GISの導入の授業も極めて親切で、配られる冊子にも使う手順が事細かに記載されている。適切な教育を適切なタイミングでやるところがさすがGSDだ。
授業で与えられたのは、テーマはニューヨークのマンハッタンとして、そこにある見えない構造を浮かび上がらせる地図を作るのという課題だった。今まで建築しか学んで来なかった身にとっては、地図を作ると言われても正直ピンと来ない。しかし、地図の概念というものは建築・都市デザインを考える上でとても重要である。
上の画像は日本のグラフィックデザイナーである杉浦康平による東京中心の時間のヒエラルキーを示した地図だ。東京からの移動時間に基づいて日本列島を同心円状に再作画することで、アクセス時間という観点で正しい地図を作成したものである。例えば、沖縄と四国と九州がほぼおなじ距離の場所にあるのが面白い。この地図は普通の地図とは違う情報を明確に示していて、これをきっかけに考えられるデザインアプローチなどは山のようにあるだろう。
このように、地図というものは自分が主張するデザインのテーマを明確に示すものになる。建築・都市デザインにとってとても重要で、建築デザインにおけるスケッチやダイアグラムのようにビジョンを共有するためのものなのだ。
今まで自分がいなかったフィールドに足を踏み入れると、これだけ新鮮で力強いものを学ぶことができるのだ。自分も杉浦康平のような地図が作れるようになるのだろうか。