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海外建築事務所で働くには海外建築事務所で働くには
2011.07.10
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海外建築事務所で働くには
※本記事は、取締役COOの川島が、2011年に北京の建築設計事務所”MAD Architects”に半年間インターンをした際のブログに一部編集を加え、転載しています。
MADでかなり多くのインターンが働いていることは何度も書いた通りだが、今回は海外建築事務所で働くためのオーソドックスな方法について紹介したいと思う。とは言え自分は全くオーソドックスではない方法でMADでのインターンをゲットしたので、(MADの代表の一人の早野さんのプッシュがあったので拒否されるわけがなかった)、他のインターンの人の話を参考に書くことにする。
①仕事経験
その人を雇うどうかにおいては、仕事経験に一番の価値が置かれる。色んなオフィスでインターンをやったことがある人はそれだけ仕事を取りやすい。正式な所員として雇ってもらうためには、インターンとしての経験が不可欠である。
②スキル
仕事に必要なスキルを持っているかどうかも大事だ。アメリカやヨーロッパ系の事務所では当然英語でのコミュニケーションに問題がないことが不可欠で、現地の言葉が話せれば雇ってもらえる確率は更に高まる。ソフトウェアのスキルとしては、illustratorやphotoshopや2Dのドローイングスキルは誰でも持っているので、3Dのモデリング(Maya,Rhino,3Dsmax等の実務でも通用するソフトウェア)のスキルを持っていることが重要なポイントとなる。
③ポートフォリオ
上の二つは一般的な日本の建築学生には足りないものばかりである。自分も当然上に書いたものを十分に満たしているわけではなかった。しかし一発逆転を狙えるものが実はあって、それはポートフォリオ(自分の作品集)である。ポートフォリオで自分のデザインのクオリティ、そしてどんなアイディアを持った人間かを強く示すことができれば、選ぶ人の目に止まり雇ってもらえる可能性が高くなる。
日本でもポートフォリオが大事なのは確かだが、小さなアトリエでもない限り、学歴に重きが置かれる風潮は否めない。そのため日本の建築学生からはポートフォリオにものすごく力を入れている雰囲気を感じない。一方でアメリカの建築学生のポートフォリオにかける労力はすさまじい。市販されている本のように製本されていることは当たり前で、まるで一流の建築家の作品集のような趣なものが多い。同僚のインターンに聞いてみれば、製本会社みたいなところに原稿を送って本にしてもらうことは普通らしい。
④仕事探し
①と②を履歴書(海外ではCV)にまとめ、強いポートフォリオフォリオの準備ができたら、あとは仕事を探すだけだ。日本とは違って、建築家の求人の専門サイトのようなものが海外では充実している。
Archinect http://archinect.com/jobs
Architizer http://www.architizer.com/en_us/jobs/
上記のWEBサイトに行けば、どこの事務所がどのようなスキルを持ったインターンや所員を求めているかが一目でわかる。MADなどは常に広告を出していて、いつでもオープンだ。そこに出された広告を読んで仕事内容と求められるスキルを見極めた上で、どこにアプライするかを決め、CVとポートフォリオを添付したメールを宛先に送るというわけである。
⑤仕事をとるまで
ここまで来るともうわかると思うのだが、このような求人広告への応募は世界中から多数ある。その中での競争を勝ち抜かなければ、メールさえ返って来ない。運良くメールが返ってきたら、給料の相談をし、インターンならば仕事の期間を決め、ここで遂に仕事をゲットしたということになる。後は現地に行くだけだ。
以上が海外建築事務所で働くためのオーソドックスな方法だ。MADには当然無数のポートフォリオが送られ続けてきている。そこを勝ち抜いたMADのインターンたちは当然のことながら、みんなハイレベルだ。正直MADの代表の一人である早野さんが知り合いでなかったら自分が勝ち抜けたどうかは微妙である。
海外建築事務所で正式な所員として雇ってもらうためにはインターンとしての仕事の経験が不可欠である。仕事経験がない学生をいきなり正式な所員として雇う理由はどこにもない。ある事務所でインターンで雇ってもらった上で、そこで猛烈にアピールができれば、後で所員として雇ってもらえる可能性もある。
長々となってしまったが以上が知っている限りの情報だ。日本の建築学生にとってはこの情報は貴重だと考えたので書き留めた次第である。この方法、アメリカの建築学生にとっての常識を、より多くの日本の建築学生が知り、就職の選択肢が広がることを願うばかりである。