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アメリカ東海岸での環境設計の考え方アメリカ東海岸での環境設計の考え方

2018.08.25

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アメリカ東海岸での環境設計の考え方

アメリカ東海岸での環境設計の考え方

GSD留学前に、アメリカ西海岸を代表するUCバークレーに訪れ、LOISOS+UBBELOHDEから環境設計について学ぶ機会があった。

カリフォルニアでは将来のゼロエネルギービルの義務化(ゼロエネルギービルでないと確認申請が下りない)を視野に入れているほど先進的なため、環境設計のメインのフォーカスはいかにゼロエネルギーにするかという点だった。

また、サンフランシスコの気候は1年中殆ど快適な範囲なため、壇冷房エネルギーの減少を重視するというよりは、自然光をどれだけ利用して照明エネルギーを減らすかというところも重視されていた。

一方で東海岸の環境設計の雄とも言えるのがPayetteだ。先述のように建築事務所の中で数少く、内作で環境設計部門を持っていて、Ladybug+Honeybeeの開発者が所属している。WEB上に出回っているスクリプトの多くが、Payetteでの設計課程で作られたものである。

東海岸の代表都市が集中する東北部では、冬の厳しい寒さを如何に少ないエネルギーで乗り切り、それほど暑くない夏に如何に無駄なエネルギーを使わないかが焦点になる。なぜこのような違いが生まれるかというと、気候によってそれぞれの機能に対する使用エネルギーの比率が変わるからだ。

建築的な工夫で内部環境を改善しようとすると、当然だがお金がかかる。なので、快適性や消費エネルギーを大きく変えることができる工夫にお金をかける価値があるわけだ。この建築的な工夫というものは、建築デザインの面白さに直結する。このように、環境設計の考え方は気候→エネルギー比率→建築的な工夫というフローで決まっていくものである。

Payetteでの詳細設計図の提出が終わった後、自分から希望を出してBuilding Science Group(環境設計部門)の仕事を手伝うことになった。対象のプロジェクトは建築設計を担当したメイン州のベイツ大学の新科学実習棟である。

日本でペプチドリーム本社・研究所を担当した時は、環境設計という観点では日射遮蔽のシミュレーションしか適用できなかった。これは自分の今までの経験値の中で、日射遮蔽を解くのが一番勝ち目があるということを考えたからで、上記のフローに数値で基づいてやったわけではなかった。

もう一つ環境設計で大事なのが、光、日射、エネルギーなど複数の観点から検証を行うことだ。1つの視点だけで検証を行うと、時にとんでもない案がとても効果的ということになってしまう。複数の点から見ればこういったエラーがなくなるのだ。

Payetteでは自然光利用率、グレア、夏のピーク冷房エネルギーなど、さらに深い部分のシミュレーションを行うことができた。上図のスタディはある窓のピッチと深さの調整によっていかに夏のピーク冷房エネルギーを減らせるか検証したものだ。

特に全体のエネルギー消費をにらみながら、このデザインオプションがやる価値があるかないか検証できたことはとても良かった。気候→エネルギー→建築的な工夫というフローはこれからも守っていきたい。

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