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世界のメトロの比較世界のメトロの比較

2018.03.08

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世界のメトロの比較

世界のメトロの比較

今学期は先に書いたジョアン・バスケッツという建築家・都市計画家の設計スタジオをとっている。敷地は、日本の建築家の黒川紀章が都市計画を手がけた、中国の鄭州(ZHENGZHOU)を対象にしている。

鄭州は古代の殷王朝の首都だったことがあるぐらいで、北京や上海に比べて長い間小さい都市だった場所だ。地理的には中国の主要都市の中心に位置していて、1950年代に中国全土を走る鉄道が整備された後に、工業や運輸の中心として発達した。

この60年間で鄭州のサイズは指数関数的に拡大し、75倍にもなったとのことだ。2000年台後半には黒川紀章が設計した鄭東新区という東側の区域が着工し、現在も建設が続いている。そのスケールがあまりにも大きく、入居が追いついていないため、建物が新しいのにも関わらず、ゴーストタウンのような場所もある。

スタジオのテーマはそのように急速に拡大した都市で起こっている諸問題に対して、都市計画という観点からいかに次の一手を打てるかということだ。世界各国で数多くの都市計画の経験を持つジョアン・バスケッツとしては、現在計画中の地下鉄に絡めた都市デザインアイディアを出すことが、最も効果的だと考えている。

学期の前半は鄭州という都市を知るためのリサーチにスタジオ全13人の学生の力を注いだ。その中でも個人的に一番印象的で多くの力を注いだのが、世界の地下鉄の比較についての研究だ。現在計画中の鄭州の地下鉄計画に問題があるのかないのか、世界の地下鉄網と比較することでヒントを得ようというものだ。

確かに、世界の都市のそれぞれに関し、あの都市は大きいだとか、コンパクトだとか、地下鉄が便利だとか、ざっくばらんとした印象は皆持っている。そこを地下鉄網という切り口で、同じフォーマットに載せて比較することで見えて来るものがある。

例えば東京、パリ、ニューヨークは地下鉄の密度がかなり高い一方で、北京などの中国の都市は密度が低く、スケールが大きい。ボストンやコペンハーゲンのような小規模の都市は、ツリー状に地下鉄網を形成することによって、ネットワークとしての便利さよりも郊外からのアクセスを重視た構造だ。

それに比べて鄭州はどうか。都市の中心に対する地下鉄の走り具合が比較できるように重ね合わせてみると、地下鉄線の数が多い一方でレイアウトの密度はかなり低いことがわかる。特に黒川紀章が設計した鄭東新区は、世界の都市から比較しても都市の中心から離れすぎていて、そこの開発がどれだけ難しいかということが浮かび上がってきた。

都市のスケールというものや密度、経済規模というものは思っている以上に世界各国で多種多様だ。その一端が地下鉄網という切り口によって浮かび上がるのは本当に面白い。

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