Journal /

アルベルト・カラチの建築アルベルト・カラチの建築

2018.01.13

Article

アルベルト・カラチの建築

アルベルト・カラチの建築

年末にメキシコシティ及び周辺の都市を旅行したのは、アルベルト・カラチの建築に憧れていたのが大きな理由だ。MADでのインターン中に、建築に周辺の自然がうまく取り込まれた建築のリサーチをしていた時に、彼の作品であるカサ・ネグロに出会った。一つの住宅の中に生活の行為と自然の多様な関係性がデザインされていて、心底感銘を受けたのを覚えている。

カラチのデザインしたものを心行くまで体験したかったので、Airbnbで泊まれるところがないか探してみた。するとReforma 27という高層マンションの部屋に泊まれることがわかったので、即予約をして、8日間はそこに泊まった。ホテルとかではなく、普通は入れない個人住宅も楽しめるのがAirbnbのとても良いところだ。

部屋に入ってみると、世界的な建築家がデザインした部屋に暮らすことの贅沢さがひしひしと伝わってきた。建築学科の学生であればそれなりの住宅であっても装飾や家具の置き方などの、小賢しい方法で家の中をオシャレにできる。しかし、カラチがデザインした住宅は、シンプルで飾らない魅力があるだけでなく、生活の行為と自然との関係がとても上手くデザインされていて、その中に暮らすだけでとても気持ちが良かった。

屋上庭園のある共用部に行ってみれば、豊かなメキシコのランドスケープとプールやカフェなどの要素が伸びやかに共存している。プールの水の色、メキシコの植栽の色、そして赤茶のコンクリートの色の組み合わせが他にない内部空間を作り出している。高層マンションのような収益性が重視されるプログラムにおいても、都市や自然と繋がった特別な空間をデザインできるのはすごい。

もう一つの旅の目的が、カラチがデザインしたヴァスコンセロス図書館に行くことだった。メキシコの日射から本を守るための百葉箱のようなコンクリートの躯体の中に、スチールでできた書架が浮かんでいるという他に例がない形式の建物だ。100m以上その形式が連続するので、中に入ると本の宇宙の中に入ったような感覚にとらわれる。

この図書館の場合は自然というよりも、本と人の向き合い方を突き詰めたような空間だ。本というのは情報・知識の象徴であり、その物体としての広がりがこれほどのスケールを持つのだということを、視覚的にも身体的にも感じられのだ。

カラチという建築家の作品では、建物の中で行われる身体の動きというものの、他の何かとの響き合い方が徹底的にデザインされている。住宅ではその対象が自然であり、図書館ではそれは本である。その建物にあるべき特別な体験は何かということが、訪れた人にも強く感じられる形でデザインしきる手腕は半端ではない。

Related Journal

Article

2024.09.18

建物のサスティナブルデザインは、「美しさ・合理性・ストーリー」で決まる

Article

2019.06.01

自動運転車(Autonomous Vehicle)の作る未来都市

Article

2019.05.25

万博が都市へ与える影響