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企業留学の2つのかたち企業留学の2つのかたち
2018.01.31
GSD留学
企業留学の2つのかたち
※本記事は、取締役COOの川島がハーバード大学デザイン大学院(GSD)留学時代のブログに一部編集を加え、転載しています。
先日、企業留学について短い文章を書いてくれと頼まれたことがあった。確かに、建築設計分野での企業留学はとても少ないので、自分に役割が回ってきたのも納得できる。
GSDの教授陣によれば、日本からの企業留学は80-90年代のバブル時期にとても多かったという。一方で、今年度GSDに入学した日本人は私を含めて2人しかいない。GSD全体で日本人学生は7~8人ほどいるが、その中で企業留学制度を使っているのは私1人だ。他の学生は奨学金か私費である。
企業留学には2つの形がある。1つ目は客員研究員としてどこかの研究室に所属し、専門分野の理解を深めるもの。2つ目は私のように一般受験を経て修士・博士課程に入学し、学位を取得するものだ。前者の方が企業におけるいわゆる海外赴任や出向に近いものがあるため、利用する企業も多い。両者ともに最終目的は日本にはない技術や情報を学ぶことであるが、留学先での経験はかなり異なるものになる。
客員研究員の場合は、修士のように必修の授業もないしクラスメイトもいない。また、有用な情報を得るためには自分の手で研究環境を整え、周囲に人脈を築き上げることが必須だ。情報や技術を仕入れる権利を自分の力で勝ち取らなければならないのだ。多くの情報や人材が集まるカンファレンス等に出席し、登壇者や会場にいる人と積極的にコミュニケーションを取るなど、シャイな日本人にはなかなか大変な作業かもしれない。
一方で、修士・博士課程の場合は、落第してしまっては元も子もないので、論文や授業で成果を出して、しっかり学位を取得することが基本だ。授業だけでもそれなりに忙しいのため、客員研究員のように専門に超特化することは難しいが、授業やクラスメイトとの切磋琢磨の中から多くを学ぶことができる。学校で学べないことを取りに行きたかったら、企業インターンなどをして専門分野のスキルを磨くのも良いだろう。
企業留学の制度は人材育成の側面も強くある。一方で、受け入れ先の学校が卒業後の留学生に求めるのは、学んだことの社会への還元である。企業留学の場合なら、帰国後も大きな規模のプロジェクトで社会貢献のできる実務者、リーダーになることを強く期待される。ただ自己の成長のための留学という気分では話にならないのだ。