Journal /
形と形式の違い形と形式の違い
2017.10.17
Article
形と形式の違い
※本記事は、取締役COOの川島がハーバード大学デザイン大学院(GSD)留学時代のブログに一部編集を加え、転載しています。
建築・都市デザイン学科の設計スタジオの第二課題は、アメリカの代表的な都市の1ブロックにデザイン提案をするものだ。ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスの三都市の中から1つを選び、それぞれの都市の特性に合わせて取り組む必要がある。どれも京都と同じ碁盤の目のような都市なので、その標準サイズのグリッドに対する提案は、ある程度どの場所にでも適用ができる。
その課題説明の中で口酸っぱく言われたのが、「形と形式の違いを見極めてデザインしなさい」ということだ。元の英語の言葉で言うと、形”Form”と形式”Type”の違いをしっかり理解することが重要だ。
その差は何か。形”Form”は、どんな形でも良い。直方体も形だし、流線型も、球もなんらかの形だ。機能があっても良いし、なくても良い。。形式”Type”というのは、なんらかの狙いや機能を持っているものだ。例えばロの字型の建物は、中央の中庭が周囲の部屋に自然光を供給する機能を持つ。中庭への入場を建物の住人にだけ制限すれば、プライバシーのある外部空間を作ることができる。
その他の例で言えば、流線型のタワーマンションがあったとする。タワーというのは狭い土地に効率よく快適な住居を積み上げる形式”Type”と言えるが、流線型というのは単なるデザインであり形”Form”だ。それに特別な機能があるわけではない。
設計の課題では、形ではなく、形式をデザインすることが求められた。学生はそれぞれ「塔」「基壇」「板」「横棒」「中庭」などの基本的な形式を与えられて、それぞれの可能性を各都市のブロックの中で追求するというものだ。
何のためにこの課題をやるのか。上にあげたような大都市で開発可能な土地があれば、その土地において最大の利益を追求する案が計画される。利益の追求のために最大の容積をその土地に確保するだけでは、都市環境は悪くなるばかりだ。そういう時に代替案として、容積による利益を確保しながら、都市環境にも貢献するような形式を出せれば、経済原理の中でも都市の居住性を高めることができる。資本主義的な開発をただ批判するのではなく、その力を使いながら、良い都市を作っていくのが狙いだ。
第二課題の講評会では、9つの異なるデザインを提出した。40人全員の学生が同じスケールで全ての案を3Dプリントし、合計360個もの模型がひとつのテーブルで並んだ。講評会ではそれぞれの形式を見比べながら、合計7-8時間に渡って熱い議論が繰り広げられた。多様なバックグラウンドの学生から出てくる多様なアイディアを見比べるのは単純に面白い。また、テーブルの上は、そこに一つの都市が出来上がったようにも見える。この架空の都市環境が本当に良いのかは疑問かもしれないが笑、これぞ都市デザインの醍醐味だというふうに思う。